通常例会_第435回
年齢があがるほどに人をまとめること、動かすことの難しさを感じます。
小学生のころに「将来は何になりたい?」と聞かれ、「社長!」「俺も!」とみんなが答えていた私の子供時代を思い出すと、親たちは無邪気な彼らをどういう目で見ていたのかと思い、複雑な心境になります。
さて、この話をしたのは、本例会では、響クラブの役員就任式があったからです。
トーストマスターズクラブは、リーダーシップを学ぶ場でもある
クラブの役員とは、クラブ運営に携わる人たちのこと。
トーストマスターズクラブには先生がいません。会員一人ひとりが先生であり、生徒でもあります。その考えは素晴らしいのですが、活動を続けていくには、ある程度の規律=まとめ役が必要となります。
役員はそのまとめ役を務める人たちで、任期は一年。7つの役割があり、会員のなかから毎年選ばれます。
特徴のひとつは、同じ人が二年連続で同じ役割を担当しないこと。トーストマスターズクラブでは、役員を務めることを、リーダーシップを学ぶ機会ととらえているためです。
社長や職場でのリーダーを務めることと比べると、責任の重さは違うでしょう。ただ、人をまとめることの難しさに直面するという意味では、変わりはないのかなと思っています。
役員はクラブ運営をする側に回り、会員とコミュニケーションを取りながら、よりよい方向にクラブを導いていくことが求められます。
もうひとつ特徴を上げるなら、役員になるのに、年齢やクラブ歴は関係ないことです。トーストマスターズクラブは、「コミュニケーションとリーダーシップ」を、実践を通して、学ぶ場として考えられているからです。
今期響クラブで会長を務めたOさんは、就任時クラブ歴3年目の二十代の男性でした。
会長離任の弁では、「大変で、やりたいことは半分もできなかったかもしれないけれど、大きく成長できた一年でした」と語ってくれましたが、立ち居振る舞いは、見事に会長のそれになっていました。
リーダーシップスキル向上はコミュニケーションスキル向上のカギ
このブログを読んでいただいている方のなかには、「むむ」、わたしは「緊張せずに」「上手に」「人前で話す」トレーニングができる場所を求めて、響クラブのサイトを訪問したので、「リーダーシップは求めていないよ」とおっしゃる人もいるかもしれません。
それは安心してください。トーストマスターズクラブには、みなさんのコミュニケーションスキルを高めるためのプログラムがちゃんと用意されています。
ただ、もしも、ほかの話し方教室と比べているとしたら、ひとつ考えてほしいことがあります。
「話が上手だね」「堂々としているね」「わかりやすい」と周りから言われるようになる真の目的とはなにかを。
それは例えば、「その企画で行こう!」と言われたいし、「その商品を買います!」「君を採用したい」と言わせたいからではないでしょうか。
実際、Oさんは、会長の役割を無事務めるにとどまらず、トーストマスターズクラブで毎年一回行われる全国スピーチコンテストに出場し、近年の響クラブの出場者のなかで、最高の成績までおさめました。
本人の努力があってこそですが、「リーダーシップスキルを高める」ことは、「言葉の説得力を高める」ことにもつながるのだと思います。
「会場係」で実践したリーダーシップ
少し長くなりますが、役員経験がリーダーシップを実践し、学ぶ格好の場だと私が、気づいた例をひとつご紹介します。
それは響クラブで初の役員、「会場係」をやっていたときのことです。
会場係とは、クラブが活動する施設(公共施設の会議室)の予約、開錠、会場のセッティング、片付け、施錠までが主な役割です。
その役割のなかで、私がもっとも面倒で、大変だったのが、会終了後の片付けでした。
会場係である私は、会が終了すると、会場の片づけを行い、施設利用時間内に施錠して、カギを施設に返さなければいけません。
そのためには机を元の位置に戻し(当時は机の配置を会ごとに大きく変えていました)、スピーチで使ったプロジェクターは、電源を落とし、電源ケーブルを巻き取り、カバンにしまう。ゴミがあれば拾い、会場を元あったように戻さなければいけません。
それだけでも面倒なのですが、会終了後の緊張が解けた後になにが起こるかといえば、会員の仲良したちがグループ作り、そこここで話に花が咲くこと。片付けそっちのけで。
楽しいのはわかる。でも、机の移動の邪魔だから、会場内で話しこむのはやめてくれ。。
おしゃべりをわき目に、有志数人と会場を片付ける私。「これが役員の仕事?雑用係じゃん」と、何度おもったことか。そんなときに、ふとある思いが湧きあがりました。
「リーダーシップ」「ここが使い時」「おしゃべりにいそしむ彼ら一人ひとりを片付けに手伝わせ、短時間で片付けを終わらせよう」と。
最初は「片付けを手伝ってください」と、大声を張り上げるレベル。でも、それだけではなかなか動いてはくれません。
次は、何をしてほしいのかをわかってもらうため、具体的に伝えるようにしました。
たとえば、「机は、施設が用意したこのマーカーの位置に合わせてください」などと。少し統率がとれるようになってきました。
さらに効果をあげたのは、一人ひとり、名前を呼びながらお願いすること。
「〇〇さん、これをこうしてください」。やってくれたら、「〇〇さん、ありがとう」とお礼をする。
そうしたトライアルアンドエラーを繰り返す中で、たった一度だけですが、見事な統率力で、片付けを終わらせたことがあります。
普段の会場は、一列15台ほどのテーブル(3人掛け)が、二列ならぶ縦長の形。その状態から、半数のテーブルを会場の後ろに押しやり、空いたスペースに、4グループの島を残りのテーブルで作るという大掛かりのもの。
配置を大きく変えた机を短時間で元に戻すにはどうすればいいのか。私にとっては、いままで培ってきた会場係としてのリーダーシップ力を試す絶好の場です。
私は考えました。そして、片付け手順を、スリーステップに分解しました。
1 みんなが座っていた椅子は、すべて会場の左右の脇にどける。
2 テーブルを並べなおす(後ろに押しやったテーブルも戻す)
3 脇にどけた椅子を元に戻す。
これを片付け前に、みなさんの注目を集めて、説明しました。すると、普段なら10分以上はかかっていたであろう片付けが、私が手伝う余地もないほどのすばやさで終わったのです。
彼らはやればできる子。何をすればいいのかがわかっていなかっただけなのだ、と先生のような思いが湧きあがり、涙さえこぼれそうでした。
これが、ささやかながら、私のリーダーシップ史における、誇らしい成功体験にして、トーストマスターズクラブは、リーダーシップを実践し学ぶ場なのだと実感した瞬間です。
響クラブは池袋であなたの見学をお待ちしています
トーストマスターズクラブは、常にあなたの成長の場となるべく、プログラムが構成されています。話し方教室では味わえない、体験がきっとできるはず。
新たなことを始めたいと思っている方、自分を変えたいと考えている方、人はいつどの瞬間からでも変わる(成長する)ができます。
ご興味が少しでも湧いたなら、ぜひ一度気軽な気持ちで、響クラブに見学に来てください。
響クラブは池袋の地で、あなたをお待ちしております。
7月からは新しい期が始まります。そこでは新たな役員が響クラブをよりよくするために試行錯誤している様がみられるはずです。