生身の言葉を味わう(第531回例会)

トーストマスターズクラブは会社と同じように一年サイクルで活動していまして、毎年7月が期首、6月が期末となります。ということで、本日は、今期(第22期)最後の例会でした。

今期を振り返ると、急速にその存在感を強めたのが生成AIでした。ChatGPTなり、Geminiなりのワードが何度みんなの口から出てきたか。スピーチテーマとして俎上に上ることはもちろん、例会の役割をサポートさせたり、この例会報告をAIに書かせたりなんてことも増えてきました。

しかしだからこそ痛感したのが、言葉の力でした。いや生身の言葉の魅力というべきか。けして流暢である必要はありません。顔を赤らめ、つまりながらも絞り出した一言一言は、私たちの琴線を震わせます。そして、その体験こそ、私たちが例会に参加する理由だったりもするのです。

本日行われた2本の準備スピーチはどちらも素晴らしいものでした。といっても、「素晴らしい」の意味あいはそれぞれのスピーチで違うかもしれません。

一本目のスピーチは今期会長が行った最後のスピーチです。スピーチプロジェクト(※)は、「人を引き付けるユーモア」のレベル5「自分の軌跡を振り返る」。タイトルは「告白」。

振り返る軌跡とは、会長としての軌跡? 告白って何? と思いつつも、スタートはなぜか「三年前に出会った彼女」とのやりとりから始まります。妻子あるのに? そこにはなにかしら私たちをミスリードしようとする魂胆を感じました。けれど、スピーカーのポーカーフェイスに、私たちはそのしっぽをうまくつかまえきれず、終盤の種明かしまでそのスピーカーの一挙手一投足に見入ってしまいました。疑いの眼でスピーチに聞き入っていた静かな序盤から、なにかに気づいた人のくすくす笑いを経て、やがて会場の大笑いへと変化する終盤の流れはこのスピーカーならでは。練り上げられたユーモアとスピーチテクニックを見せつけられました。

ちなみに、「会長」「自分の軌跡を振り返る」というヒントで「三年前に出会った彼女」が誰かを特定できる名探偵がいらっしゃるかもしれませんが、そうでない方のためにお伝えしますと、その「彼女」とは私たちの所属する「響クラブ」のことでした。つまり、この「告白」とは、響クラブと私たちへの彼なりのユーモアたっぷりの愛情表現であったというわけです。

※「スピーチプロジェクト」とは、私たちが選択したパス(スピーチづくりのマニュアルのようなもの)による課題。レベルは1~5まであります。(以下同)

二本目のスピーチは一本目の卓越した展開とはある意味真逆。スピーチプロジェクトは、「影響力ある説得」のレベル4「質疑応答」。来期会長となるスピーカーによる意思表明を兼ねたスピーチ。後半はみんなからの質問に答えます。

スピーチタイトルは「父の背中」。序盤は誠実な働き方だけでなく、子供ながらに感じた不器用な父親の姿が赤裸々に語られます。やがて父親の不器用さに自身の至らなさを重ね合わせていく流れから、彼自身の課題とその克服への表明へ移っていきます。普段はメモに頼りがちであったスピーカーですが、この時ばかりは参加者一人一人の顔を見ながら、思いのたけを語ってくれました。その不器用な姿に多くの人が来期会長としての彼を応援したくなったはずです。

この日は6人ものゲストが参加してくれました。多くの人はおそらく一本目のスピーチを楽しまれたと思います。でも、他方で時に言葉に詰まったり、あるいは言い直したりしながらも、ありたい自分の姿を一所懸命みんなに伝えようとする姿に、自らを重ね合わせた人も少なくないのだと私は確信しています。というのも、この日入会宣言をしたゲスト見学者が2名にも及んだからです。後者のスピーチは、とてもAIにはまねができない、計算の及ばない生身の人間の「言葉」がそこにはありました。

といって、これはAIを否定するものではありません。むしろこれからの私たちはAIと仲良くしていかなければいけない。でも、……AIをよりよく活用する人間であるためには、なにより私たちは生身の言葉を知っていなくてはいけない、と私は思うのです。

あなたはどう思いますか?

いやいや、そもそも人前で話すなんてできないし、生身の言葉ってなに? 言葉がでてこなくてフリーズして、しまいにはあわあわ言っている自分なんて想像したくない……そう思う方もいるかもしれません。

でも、私たちの心にすっと入ってくる生の言葉って、実はこういった「体重の乗った」言葉だったりします。

だから「何を話せばいいかわからない」を恐れないでください。

響クラブには、話し上手な人もいれば、言葉を探しながら話す人もいます。

でも共通しているのは、「昨日より少しでも成長したい」と願っていることです。

「自分にもできるかな?」と思われた方はぜひ響クラブの例会に参加し、ご自身の目で、耳で、生身の言葉を味わってください。それだけでも得るものがあるはずです。

本日例会では後半に、来期役員の就任式も行われました。6人のゲストのなかには来期エリアディレクターも含まれており、大勢の人が見守るなかで、来期役員がクラブに対する献身を約束しました。

来期役員の皆様、響クラブをよろしくお願いします。

そして、このブログを最後まで読んでくださった皆様、ぜひ来期響クラブの例会でお会いしましょう。

次回は新体制の初回例会。

見学は手ぶらで大丈夫。話さなくてもOK。まずは雰囲気を感じに来てください。