『真実の瞬間』レポート2──今期『真実の瞬間』の狙いとは?

私が『真実の瞬間』のファシリテーターを行うにあたり、最初に考えたのは、クラブのみんなから『真実の瞬間』でどんなアクションを引き出したいのか? でした。
・革新的な例会アイデア?
・新規会員を集めるための素晴らしい方法?
それとも……アイデアはどんなものでも嬉しい。でも……

■起点は「会員満足度」を示すアンケート結果
そう考えているうちに、あることを思い出しました。以前トーストクラブのアンケート結果で、「個人の求めるスキルとクラブの方向性がマッチすると、満足度が上がる」というデータがあったことを。

私はこれをみんなに聞いてみたいと思いました。
「みんなが求めるスキルとクラブの方向性は一致しているのか?」どうか。
つまり、「響クラブがみんなにとっての成長の場になっているか?」を。

響クラブ会員は現在14名。そのなかで10年近く所属するメンバーが半数近くいます。一般的にトーストマスターズクラブ会員の平均在籍年数が2年ほどであることを考えると、これだけの古参メンバーを抱えているクラブには確かな魅力があるはずです。それなのに、会員数は増えていきません。

「なにが足りない」のだろう? あるいは「なにがあれば」盛り返せるのか?
そのヒントは、響クラブの「みんなが求める成長の場とはなにか?」を聞くことで見えてくるのではないか。

■スローガンとの融合
考えた末に、「響クラブはみんなにとっての成長の場になっているだろうか?」という問いに加えて、「大人の遊び場」という視点も加えることにしました。
この「大人の遊び場」とは今期響クラブのスローガンとなります。スローガンは毎年新しいものを掲げてはいるのですが、毎回浸透度が低いことが気になっていました。
トーストマスターズクラブは、コミュニケーションとリーダーシップを高めるための、いわば学びの場。しかし、それを「遊び場」と拡張するアイデアを私は気に入っていました。

「大人の遊び場とはなんだろう?」という視点をフックにして、「みんなにとっての成長の場とはなにか?」に繋げることができれば、響クラブらしいユニークなアイデアが浮かぶかもしれないと期待したのです。しかも、スローガンの浸透度も高めることができるので一石二鳥です。

■スメドレー博士の言葉
これを後押ししたのが、夏のトーストクラブの教育研修会で耳にした次の言葉でした。
We learn best in moments of enjoyment.
(私たちは、楽しみを感じる時に最も効果的に学びます。)
これはトーストマスターズクラブの祖であるスメドレー博士の言葉です。大人を引き付ける魅力あるコミュニティクラブが存在するとしたら、それは「楽しみ」ながら「成長」できる場であるはず。この言葉に触れて、私が『真実の瞬間』で引き出したいアクションの方向性がはっきりしました。

■ペアトークを入れる
次に考えたのは、この『真実の瞬間』を行うわずかな時間をいかに有意義に使えるかでした。開催するのが火曜夜の19時半~21時15分までの間。実時間とすれば100分前後となります。
この100分の間に深い話し合いを行うためにはどういう仕掛けが必要だろう。それを思案するなかで出会ったのが、「ペアトーク」というやり方でした。
いきなりグループセッションに入るのではなくて、まずは準備体操のようにペアで対話を行うことで、身体と発想のコリをほぐすのが「ペアトーク」の役割です。「ペアトーク」のあとにグループセッションを行えば充実した話し合いが実現する。ペアトークというやり方を知らなかったので、「これは面白い!」と思い、取り入れることにしました。

まずはペアトークで「響クラブで楽しかった瞬間」と「そこで得たもの」を話し合い、次にグループで「大人の遊び場とは」そして、「成長の場とは」と段階的に進めることにしたのです。

■議論シートを作る
ここまで詰めれば8割方は十分と思ったのですが、さらに議論の方向性を定める補助線を引くことにしました。そこで作ったのが議論シートです。

たとえば、
【問い】響クラブで「楽しかった瞬間」と「そこで得たもの」は?
【ヒント】
・小さなことでもOKです。例会後の雑談で笑い合ったこと、準備したスピーチをやり切った達成感、新しい仲間に出会えたこと、など。
・「楽しい瞬間=自分にとっての価値が生まれた瞬間」でもあります。

などと各設問に対して、どんな回答を求めているのか、どんな方向で考えればいいのかを示したのが「議論シート」です。議論が発展する余地を狭めてしまう可能性はありましたが、私自身ファシリテーターの経験がないという不安感から試してみることとしました。

以上が、私が『真実の瞬間』をどのように進めようと考え、それをどのように設計したのかという話になります。
念のためにお伝えすると、この設計は、トーストクラブに向けて配布されているワークショップ『真実の瞬間』の進め方からすると、若干のアレンジが入っています。
実際に運用する直前には、クラブの三役と呼ばれる会長と会員担当副会長と私(教育担当副会長)とでミーティングを行い、趣旨の説明と彼らからの理解を得たことをお伝えしておきます。

以上となります。