# **秋分の夜、言葉と挑戦が交差した「すっきり」な時間:第513回例会報告**

## **序章:秋分の夜に灯る、スピーチの情熱**

2025年9月23日、秋分の日。昼と夜の長さが等しくなるこの特別な夜、響トーストマスターズクラブの第513回例会は、オンラインと会場の熱気が交差するハイブリッド形式で開催された。この日の司会進行役である「今夜のトーストマスター」を務めたのはK.Mさん。彼は冒頭の挨拶で、涼しくなりゆく季節に触れ、それはクラブで育まれる個人の成長のメタファーでもあると語りかけた。
この夜は、二人のゲストが会に彩りを添えた。ストーリーテリングトーストマスターズクラブから参加したT.Yさんは、39度の高熱にもかかわらずオンラインで参加するという情熱を見せた。その姿は、トーストマスターズの活動が持つ強い引力を物語っていた。もう一人のゲスト、I.Yさんは、かつて赤羽のクラブに所属していた際に響クラブとの合同例会などで交流があったという。久しぶりの参加に「楽しみにしてきました」と語る彼女の笑顔は、クラブが長年にわたり築いてきた温かいコミュニティの証左であった 。
この日の例会全体の方向性を定めたのが、T.Yさんが提示した「今夜の言葉」、\*\*「すっきり」\*\*であった。「わだかまりがなく気持ちの良い様」「余計なものがなくスムーズな様」と定義されたこの言葉は、単なる語彙の練習にとどまらず、即興スピーチから難易度の高いプレゼンテーションに至るまで、すべての活動を貫くテーマとなった。参加者全員が「すっきり」としたコミュニケーションを目指すことで、会全体にポジティブで建設的な一体感が生まれていった。

## **例会の羅針盤:個性豊かな役割担当者たち**

トーストマスターズの例会は、メンバーが様々な役割を担うことで円滑に運営される。この日の役割担当者たちは、それぞれの任務に個性と創造性を吹き込み、会を確かな方向へと導いた。

* **計時係(I.Tさん):** 彼は、スピーチの時間管理という技術的な役割を、色づく紅葉に例えた。緑、黄、赤と変わる葉の色を、時間を示すシグナルと重ね合わせる詩的な表現で、役割紹介を芸術の域にまで高めた。
* **えーとカウンター(H.Kさん):** 「あのー」「えーと」といった不要なつなぎ言葉を数える役割の彼女は、「皆さんのスピーチが『すっきり』するように」と、自らの役割を今夜のテーマに直結させ、参加者の意識を高めた。
* **文法係(T.Yさん):** ゲストながら大役を務めたT.Yさんは、文法的な誤りを指摘するだけでなく、「素晴らしい言葉遣い」を積極的に拾い上げると宣言。評価が常に前向きで、学びを促進するものであるべきだというクラブの姿勢を体現した。
* **記録係(S.Yさん):** 彼の紹介は、クラブが時代と共に進化していることを象徴していた。かつては手作業で議事録を取っていたが、今ではChatGPTに文字起こしを任せ、自身は編集に注力しているとユーモアを交えて語った。これは、クラブが最新技術を柔軟に取り入れ、活動の効率化と質の向上を図っている好例である。

これらの役割は、以下のメンバーによって担われた。彼らの尽力が、学びと成長のための盤石な舞台を築き上げたのである。

| 役割 | 担当者 (Member) |
| :—- | :—- |
| 今夜のトーストマスター | K.M |
| 計時係 | I.T |
| 集計係 | K.M |
| えーとカウンター | H.K |
| 文法係 | T.Y |
| 記録係 | S.Y |
| テーブルトピックスマスター | T.K |
| 総合論評者 | S.Y |

## **瞬発力が試されるテーブルトピックス:「10月から変わるもの」**

準備なく、即興でスピーチを行うテーブルトピックス。この夜、マスターのT.Kさんが掲げたテーマは「10月から変わるもの」という、時事性と普遍性を兼ね備えた絶妙なものだった。これにより、スピーカーは自身の知識、価値観、そして人間性を即座に言葉にする挑戦を迫られた。

* **トピック1:ふるさと納税のポイント付与廃止**
* **スピーカー:T.Kさん**
* 最初のスピーカーとして自ら口火を切った田宮さんは、ふるさと納税制度を「実質2000円の負担で返礼品がもらえる買い物」と分かりやすく解説。おすすめの品として、価格が高騰している「お米」を挙げ、実用的な視点を示した。
* **トピック2:『秒速5センチメートル』実写版公開と、好きな新海誠作品**
* **スピーカー:T.Y**
* 彼は『天気の子』を挙げ、「世界よりも一人の大切な人を選ぶ」という主人公の決断を熱く支持。「世界よりも大切な人を選ぶ、そんな大事な人が欲しい」と締めくくり、自身のロマンティックな価値観を情熱的に表現した。
* **トピック3:教育訓練給付金制度と、学び直したいこと**
* **スピーカー:H.Kさん**
* H.Kさんは、20代で習った着付けの技術を、経済的な理由で断念したという個人的な経験を吐露した。「無理してでもステップアップできなかった自分の弱さ」という過去の後悔を「すっきり」させるため、もう一度着付けを学び直したいと、心からの願いを語った。
* **トピック4:Windows 10のサポート終了**
* **スピーカー:I.Yさん**
* I.Yさんは、新しいPCを買うべきか否かで揺れる「頭の中での会議」をユーモラスに描写。トーストマスターズのITマネージャーという新しい役割のために高性能なPCが必要だという実用的な側面と、「まだ使える」という倹約家の側面との葛藤を語り、最終的に「早いとこ買ってすっきりしたい」と結論づけ、聴衆の共感を誘った。
* **トピック5:経営者視点でのテレワーク導入の是非**
* **スピーカー:J.Kさん**
* 彼は経営者の視点から、テレワーク導入に「反対」という明確な立場を取った。生産性の管理が難しく、自身もオフィスの方が集中できると主張。他のスピーカーとは一線を画す現実的かつ挑戦的な意見は、議論に深みを与えた。

このセッションは、単なるスピーチ練習の場ではなかった。それは、メンバーが自らの価値観、弱さ、そして日々の課題を率直に語る、心理的安全性の高いプラットフォームとして機能していた。

## **魂のプレゼンテーション:三者三様の準備スピーチ**

例会の華である準備スピーチでは、3人のスピーカーがそれぞれの経験と洞察に基づいた、魂のこもったプレゼンテーションを披露した。それは、恐怖の克服からスキルの収益化、そして極限状況での対応力まで、トーストマスターズがもたらす成長の軌跡を見事に描き出していた。

### **T.Aさん:「外に出ると動き出す」**

T.Aさんは、先日参加した大規模なトーストマスターズのイベントでの体験を語った。ファシリテーターから「隣の人と意見交換してください」と促された瞬間、面識のない女性が隣にいた彼は「しまった」と心の中で叫んだという。多くの人が共感するであろう、ネットワーキングへの苦手意識。しかし彼はそれを「トレーニングだ」と捉え、勇気を出して話しかけた。共通の話題(二人とも教育担当副会長だった)を見つけた途端、会話は弾み、深い共感で繋がった。このスピーチの核心は、「外に出て、人と会うことで得られるエネルギーや気づきは、オンラインで得る情報とは比較にならないほど強力だ」というメッセージにあった。それは、行動を起こすことの価値を、自らの体験を通して力強く訴えるものだった。

### **I.Yさん:「そのスピーチ、おいくらですか?」**

I.Yさんのスピーチは、衝撃的な告白から始まった。かつてスピーチに習熟するという目標を達成した後、彼は燃え尽きてしまい、2年間も活動を休止していたという。そんな彼に再び火をつけたのは、友人から依頼された大学での有償講演だった。90分間のスピーチをやり遂げた後、彼は学生からの感謝のフィードバックだけでなく、「お金」という形で自らのスキルが社会的に評価されたことに深い感銘を受けた。それは、トーストマスターズで磨いた能力が、実社会で具体的な価値を持つことの証明だった。この経験から、彼は現在、スピーカーと有償の講演機会を繋ぐ事業を立ち上げようとしている。自身の挫折と再生の物語を、仲間への新たな価値提供へと昇華させた、感動的なスピーチだった。

### **T.Kさん:「クラブサクセスプラン」― 困難への挑戦**

この夜、最もスリリングだったのがT.Kさんのスピーチだ。彼の課題は「気難しい聴衆の管理」という高難易度のプロジェクト。彼がクラブの成功計画(クラブサクセスプラン)について冷静にプレゼンを始めると、事前に指名された妨害役のメンバーから、厳しいヤジが次々と浴びせられた。
ヤジ1: 「何か、現実的ではないというコメントがございましたが」
ヤジ2: 「これ、当たり前のことなんですからね。(中略)本質的なのはクラブの中身を回復しなきゃいけない」
ヤジ3: 「じゃあ、これ、改善すべきところは我々のクラブじゃないんですか?」
これらの厳しい追及に対し、T.Kさんは驚くべき冷静さで対応した。「正しいと思います」「おっしゃる通りです」と相手の意見を一度受け止め、その上で「しかし、その目的を達成するために、まずこの計画という土台が必要です」と、議論を本筋へと巧みに引き戻していった。これは単なるスピーチではなく、プレッシャー下での交渉術とリーダーシップを試す、高度なシミュレーションであった。クラブがこのような挑戦的な訓練の場を提供している事実は、ここが単なるスピーチサークルではなく、真のリーダーを育成する道場であることを証明していた。

## **成長への道標:愛ある論評の部**

スピーチは、論評(評価)があって初めて完成する。この日の論評の部では、各スピーカーに対して、具体的で、示唆に富み、そして何より成長への愛情に満ちたフィードバックが送られた。

* **T.YさんからT.Aさんへ:** スピーチの物語性を「文学的」と高く評価しつつ、「常に動いているジェスチャーを、要所要所で意図的に使うことで、さらにインパクトが生まれる」と、表現力を一段階引き上げるための的確な助言を与えた。
* **T.AさんからI.Yさんへ:** ユーモアと情熱に溢れたプレゼンを絶賛。その上で、「スライドの文字が小さく、後ろの席からは読めなかったかもしれない」という、視覚資料作成における極めて実践的な改善点を指摘した。
* **J.KさんからT.Kさんへ:** 気難しい聴衆を冷静にあしらった手腕を称賛。しかし、さらに一歩踏み込み、「実際のビジネスの場では、時にはより強く反論し、主導権を握る必要もあるかもしれない」と、状況に応じた戦略の使い分けという、より高度な視点を提供した。

最後に、総合論評者のS.Yさんが登壇。彼は、各役割担当者の貢献を称え、特にテーブルトピックスのテーマが時宜を得ていたと評価。会全体を俯瞰し、良かった点と更なる改善点をバランス良く指摘することで、この日の学びを締めくくった。

## **輝きの瞬間:受賞者発表と「すっきり」した閉会**

すべてのプログラムが終了し、いよいよ受賞者の発表へ。小尾野さんの手によって、この夜、特に輝きを放ったメンバーが発表された。

* **ベストテーブルトピックス賞:I.Yさん**
* **ベスト論評賞:T.Yさん**
* **ベストスピーカー賞:I.Yさん**

受賞者たちの笑顔が、会場を温かい祝福の空気で満たした。
最後にゲストのT.YさんとI.Yさんから感想が述べられた。T.Yさんは「第三者として見ると、気難しい聴衆のプロジェクトはこんなにも面白いのか」と感嘆し、I.Yさんは「以前と変わらない、居心地の良い雰囲気が維持されていて嬉しい」と語った。二人の言葉は、このクラブが持つ、楽しさと挑戦、そして温かさが共存する唯一無二の魅力を裏付けていた。
秋葉原クラブのコスプレ例会など、今後の活動に関する告知が行われ、閉会の時間となった。秋分の夜に集ったメンバーたちは、言葉を磨き、互いに学び、そして挑戦した。誰もが、来た時よりも少しだけ成長し、まさに「すっきり」とした表情で会場を後にした。響トーストマスターズクラブは、そんな爽快な成長体験を求めるすべての人々にとって、常に扉が開かれている。

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